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『〝なかま〟と〝縁〟とサケコレ』
2025.11.10更新
『新年とオンライン飲み』
――年が明けた。
今年も仕事の関係から実家に帰ることはせずに、東京の自宅で大晦日、新年を過ごした。
家族と会えなかったのは残念だったけれど、とはいえ初詣に行き甘酒を飲むことはできたし、恒例となっているお屠蘇を飲むこともできた。十分にゆっくりすることはできたと思う。
そして今日は一月三日。
テーブルに置かれたタブレットのディスプレイの調整をしつつ、私は晩酌の準備をしていた。
これから地元の友人たちと……オンライン飲みをするのだ。
ここ最近ではすっかり当たり前のものになった、ビデオ通話アプリを介して離れた相手と開催する飲み会。
時間になったのでアプリを立ち上げ参加ボタンをタッチすると、ディスプレイには見知った顔が次々と映り始めた。
今日の参加者は私を含めて四人。
学生時代のクラスメイトたちだ。
それぞれグラスにお酒を注いで、新年の挨拶と乾杯をする。
飲んでいるのは『純米吟醸鳳陽 馬の酒』
去年、一昨年に飲んだ『純米吟醸鳳陽 蛇の酒』『純米吟醸鳳陽 竜の酒』と同じ、干支のラベルが使用された縁起のいいお酒だ。
そしてディスプレイの向こうにも、同じ馬のラベルの四合瓶が三本映っている。
偶然ではなく、事前に示し合わせて、皆で同じお酒を飲むことにしていたのだ。
こうしたちょっとした趣向を楽しむことができるのも、オンライン飲み会の醍醐味だ。
お互いに近況などを笑顔とともに話し合っていると、自然とお酒は進んでいく。
お店で飲む時よりもペースがついつい速くなり過ぎてしまうのがオンライン飲み会の玉に瑕なところだけれど、それすらも楽しんでしまえる温かな雰囲気があった。
お酒が進むにつれ、会話の内容も次第に深いものになっていく。
普段だったら少しばかりの遠慮の壁に隠されていたかもしれない、本音。
だけどそれを、たとえほんの欠片だけでも、口にしかける機会があるのも……またお酒の力だった。
気がつけば、空気はすっかり昔のものに戻っていた。
距離こそ離れているけれど、まるでそこに皆がいるかのような温かい笑い声が辺りを柔らかく包んでいる。
遠く離れた相手とも、たとえディスプレイ越しであっても、同じお酒を通して時間と空気を共有することができる。
つながることが……できる。
これも立派に〝縁〟と言えるのだと、本日三回目の乾杯を交わしながら思った。
会話はまだまだ盛り上がりを見せていて、終わりの気配は見えない。
帰宅の時間を考えないで良いのも、オンライン飲み会の良いところの一つだ。
なみなみと注がれたグラスを笑顔で再度傾ける。
もう少しだけ、旧交を温めるこの幸せな時間は続きそうだ。
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五十嵐雄策プロフィール▶
小説家・シナリオライター。東京都生まれ。
2004年KADOKAWA電撃文庫からデビュー。
ゲームシナリオや漫画原作、YouTube漫画脚本やASMR作品脚本なども手がける。趣味はお酒を飲むこと、釣り、旅行、ドライブ、ピアノ演奏等。他、著作に「ひとり飲みの女神様」(一迅社メゾン文庫)、「ひとり旅の神様」(メディアワークス文庫)、「七日間の幽霊、八日目の彼女」(メディアワークス文庫)など。











