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【よもやまばなし】アッサンブラージュのはなし。
2023.06.09更新
【よもやまばなし】賞味期限のはなし。
日本酒に賞味期限はあるの?
賞味期限とは、農林水産省によると「品質が変わらずにおいしく食べられる(飲める)期限」のこと。
結論から言うと、日本酒には賞味期限はないといっていい。
一部のアルコール飲料には表示義務が課せられておらず、日本酒もそれに含まれている。
メーカーが目安として1年などと定めている場合があるが、製品に明示されていることはほとんどない。
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賞味期限の設定は、おいしくなればいいというわけではなく「品質が変わらずに」というのがキーワードとなる。
日本酒の場合、変化、熟成の概念があり、保存環境やもとの酒質によっても品質の変化はまちまちで、賞味期限を見極めることは難しい。
それに、しばらく楽しみに置いていて円熟極まったであろうところで、あら賞味期限が過ぎてるわ、と勝手に料理酒にされようものなら私なら3日は枕を濡らすだろう。
ただ一口に日本酒と言っても様々なタイプがある。
火入れの有無、アルコール度数、その他の成分の濃淡も酒質の経年変化に影響する。
糖やアミノ酸が少なく、2度の火入れでしっかりと酵素の不活性化、殺菌をしたような酒は数年置いても官能的にはわからないほど変化しづらいもある。
開栓したらすぐ飲んだほうがいいの?
一度開栓した酒は、「すぐ」の度合いは酒によるものの、なるべく早く飲んでしまうのが無難だ。
先に述べたような酒質変化しづらい酒は、私の体験上、開栓後常温で1ヶ月ほどかけてゆっくり飲んでも香味に問題が起きなかった(お勧めするわけではないが・・・)。
繊細緻密な瞬間の旨さを味わうフレッシュタイプの酒は、冷蔵していても1週間ほどでパンチがなくなってしまうこともある。
そしてどんな酒でも酸化は必ずしていくし、アルコール飲料とはいえそもそも衛生的な面を考えると早めに飲んでしまうに限る。
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しかし、生酒であれ何であれ、その日に飲み切ってしまうのはもったいないと私は思っている。
一度開栓して空気に触れさせ1日ほど置くことで、パッと香味が開く酒がある。
これに出会うとにやりとしてしまう。
人見知りの照れ屋さんめ。
今日は笑ってくれたな、などと独り言ちつつ、3、4日かけて飲むのもオツなのである。
必ずしものルールはない。
目的を持った適切な方法で保存して、あなただけのおいしい日本酒ライフを。
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(月刊ビミー 2021年12月号より加筆転載)