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【よもやまばなし】アッサンブラージュのはなし。
2023.06.09更新
【よもやまばなし】ひやおろしの時季のはなし。
秋の酒、ひやおろし
春夏秋冬に日本酒あれど、秋は特に盛り上がる時季だ。
食欲の秋、美味の秋。
日本の秋の食材はわかりやすく美味い。
夜長に嗜む酒もまた格別となる。
秋の酒といえば、時季ならではの「ひやおろし」が続々出荷される。
ひやおろしは昨春に搾った酒を一度火入れしひと夏のあいだ貯蔵熟成させ、「ひや」(二度目の火入れをせず)のまま「おろし」(出荷し)たものをいう。
フランクにいうと「いい感じに味が乗りつつもほどよくフレッシュないまだけ酒」というわけで、カドが取れた円熟味がほどほどに感じられることが魅力となる。
小売は売り場の取り合い
現在では、早いものだと8月下旬頃から店頭に並び出す。
9月中旬頃までは体感的には夏で、ちょっと早いなあ、でも大手さんのビールやチューハイなんかも先取りだし、そういうもんかなあ、とお考えのあなた。
ほぼそういうもんなんだけど、内情はちょっと違う。
ビールやチューハイは年間を通して製造しているわけで、ましてや環境任せの熟成なんてしないわけで、発売日から逆算して製造計画を立てればいい話だ。
日本酒はそうはいかない。
A社:「うちは8月に出すよ」B社:「うちは9月初旬」C社:「うちはもっと味を乗せたい!すまんけど10月」こんな様子で、なんとなくC社にとって不公平な実情となっている。
各酒販店やファン消費者からの厚い信頼があれば売り切れるのだが、他のひやおろし商品の売れ行きを見て注文を遠慮されてしまう可能性だってある。
酒販店としては、季節酒が売れ残ることはなかなか頭の痛い事態なのだ。
ひやおろしのジレンマ
そんなわけで早く卸し先を決めたいメーカーは早く製品化してしまいたいのはよく理解できるが、皆が皆、ジリジリと早めていくと致し方なく不本意な味乗りのまま出荷せざるを得なくなる所も出てくる。
事実、毎秋そういったひやおろしに少なからず出会う。
ひやおろしは「秋に向けて売るために造った酒」ではなく「秋だから美味しい酒」であるべきだ。
さんまもきのこも、秋に美味いから旬なのだ。
ボジョレーヌーボーほどじゃないにしても、本末転倒にだけはならないように取り決めがあった方がいいように思う。
※9月9日・重陽の節句が解禁日と言われているが、やんわりしてしまっている。
(月刊ビミー 2022年9月号より加筆転載)