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【蔵元訪問記】蔵元訪問記/天鷹酒造(栃木県)
2024.10.29更新
【蔵元訪問記】内ケ崎酒造店
走る、走る!上る、降りる、走る、走る・・・。
早朝6時から、止まることのない酒蔵の作業。16代目蔵元である内ヶ﨑啓氏(35歳)が、杜氏として精一杯の奮闘を重ねる。
ここ内ヶ崎酒造店は宮城県最古の酒蔵だ。初代内ヶ﨑筑後(後に織部と改名)が伊達政宗公の命により富谷に宿場を設け、二代目作右衛門が酒造業を寛文元年(1661年)に開始。創業以来350有余年の歴史を抱え、今、内ケ崎酒造店の酒蔵には令和の新しい旋風が起こっていた。
今は自然に筋肉がついて
●お忙しい時期に、お時間いただいてありがとうございます。蔵元とは何度かお会いしていますが、随分逞しくなられたようですね。
大学卒業後に出羽桜酒造さんで学ばせていただいたのですが、その頃は筋力がなく、酒造りのために筋力をつけなさいと、筋トレするように言われてました。
今は自然に筋肉がついて。1週間にタンク1本仕込むことにしてまして、洗米から蒸し、麹造り、添え仕込み‥など、あれもこれもとスケジュールいっぱいです。
●東北大学では農学部で、酒造りの経験はなくて出羽桜酒造さんへ行かれたんですね。
そうです。最初はラベル張りからでしたが、造りはしんどくて、心折れそうになりました。ただ最後の年に、大吟醸を洗米から社長の指揮の元に造り、これはめちゃくちゃ嬉しかった。この酒が全国新酒鑑評会は金賞でした。
良い成功体験でした。自分も酒造りできちゃうかもと、かわいらしい自信を持ち帰れました。出羽桜酒造のお蔵元や杜氏さんとは今でも、交流があります。
人間必死になると何とかなるもの
●内ケ崎酒造店に帰ったときは南部杜氏さんがいらした。
はい。5年は杜氏の元で酒造りをしていましたが、出羽桜さんとは全然違う。
米も環境も、麹の造り方も違う。南部杜氏さんは麹を「突きはぜ」にします。
あたふたしてました。毎日勉強だなと…。杜氏さんは5年で引退すると聞いていたので、自分の現状を自覚しなきゃと必死でした。
でも人間必死になると何とかなるのものなんですね。5年後には結果、二人で酒造りをすることになりまして、僕は麹と醪は見られる、もうひとりは酛と搾りができるというから、これなら大丈夫!と二人で協力していきました。
だけど百聞は一見にしかずで、見るのと触るのとは違った。杜氏さんいなくなって自分で全部解決しなきゃならなくなって、わかってなかったことがどんどん増えてきました。それをひとつひとつ解決していった。自分で考えて、やっと見えてきました。
すべての酒を槽で搾ることに
●戻られて11年、杜氏さんになって今年で6造り目。今年の全国新酒鑑評会では金賞を受賞。以前から変えたことは?
すべての酒を槽で搾ることにしました。醪を入れる袋は冷蔵庫にしまって、使うときにだけ持ってくる。ステンレスにして掃除がしやすく、衛生的に良い。何といっても酒の味がいいんです。
タンクは温度調整ができるサーマルタンクを入れました。濾過も変えて、今流行りの「SFフィルター」を使います。
槽で搾った酒がSFフィルターに通るか心配でしたが、通りました。以前は珪藻土のフィルターでしたが、SFフィルターはスピードが速い。酵母も今年は新しいのを使います。
●大改革ですね。そんな中でも大切にしていることは?
麹は重さを計りますが、手で触ってみて初めて米の状態がわかります。醪のデータを採るだけでは意味がない。見た目、匂い、櫂入れしたときの米粒の感覚から、自分の感覚で情報を見ていきたい 。
●ご自分で一番カワイイと思うお酒は?
『純米大吟醸 蔵の華』。すごく苦労しました。米が固くて浸水は30分かかります。「山田錦」は8分くらいなのに。麹も生えにくく、寝ないで1時間おきに見てました。最近はいい感じになってきましたよ。
●方向性が固まってきたとのことですが、今後はどんなお酒を造っていきたいですか?
柔らかいお酒、飲んでいてほっとする酒、香りはきれいにふわっとあれば、食事も華やぎます。
【内ケ崎酒造店】
〒981-3311宮城県富谷市富谷新町27 TEL. 022-358-2026