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【蔵元訪問記】宮尾酒造(新潟県村上市)
2024.12.31更新
【蔵元訪問記】蔵元訪問記/須藤本家(茨城県笠間)
300年、400年もの樹齢の木々が鬱蒼と茂るその杜は、須藤源右衛門55代目当主が先祖から酒造りを継承する須藤本家。古くから「杜の蔵」として親しまれ、酒蔵を取り囲むように育った欅の木は、夏の暑い日差しから酒蔵を守る。
敷地にある井戸は、木々が蓄えた水を集め、代々「御酒(神酒)の湧く水」と伝えられた発酵力の強い水として大切にされてきた、という。「良い木は蔵を守り酒を守る」の信条の元、杜の手入れを怠るときはない。とても重要な仕事だと、自らを杜の番人とする須藤蔵元。
冬になると風が変わる。それがわからないと酒造りはできない。ほぼ自然と酒造りは同位体だと語る須藤蔵元からは、自然界への畏敬の念が伝わってきた。
自然の摂理と合致した酒造り
●自然と酒造りは同位体とはどういうことですか?
お酒を冷蔵すればいいかというとそれだけではだめで、自然の冬の空気の中で酒造りをすることが大切です。自然の寒さが大事。冬の寒さの中では空気中の菌が激減します。酵母にとっては生育しやすい環境が整う。自然の摂理によってそうなるわけで、人工的に作るものとはまったく違う。
たとえばフランスのブルーチーズの[ロックフォール」は紀元前から今でも、洞窟の中で作る。フランスでは、そういう中でこそ衛生環境が保てるということがわかってる。石灰岩の洞窟で風が抜けていくところだからこそ出来上がるチーズです。工場で作ったら、同じようには絶対ならない。酒造りも同様、自然の摂理に合致した方法で造るのが一番。
なので、当社の仕込みは冬季だけ。タンクは温度調整できますが、それはあくまでサポート的なものです。
●造りはいつからですか?
11月12,3日あたりから3月いっぱいです。造りは4名で行なっていて、岩手から南部杜氏が入っています。
●須藤蔵元も酒造りをされるのですか?
昔入ってましたが、今は入っていません。酒質の設計図は私が造り、杜氏と擦り合わせをして、搾るタイミングなんかも一緒に考える。すべてに目を行き届かせています。そうじゃないと良い酒はできません。
絶対味覚を磨いて
●どんな日本酒を目指しているのですか?
「美味しい」お酒。「美味しい」って難しい。絶対音感と同じ領域の「美味しさ」ってあるわけですね。「絶対味覚」です。その感覚は自分で判断して磨かなければならない。味覚はいつも追及しています。甘いのがあったり、辛いのがあったりするけれど、それを越えて「美味い」と言っていただける味。
私のプラットフォームは健康なんですよ。
体にいいお酒。臓器への負担が軽い酒。
お客様が健康被害にあわず、いつまでも健康で呑んでいただきたいなと。日本酒は百薬の長と言われてきました。
うちのにごりはタミンB1からB12まで全部持ってることを調べました。摂取しにくいビタミンも入ってます。
出荷されるお酒すべてが生酒なんですね。
生酒は昭和48年から出しています。生の方が美味しいからです。流通網の発達していない昔は、酒販店さんに何日にいくからとアポを取って、店まで私が運んでいきました。お客様がお待ち頂いて購入してくれたりもしました。年間8万キロは走りましたよ。
江戸時代はみんな生で飲んでましたからね。その美味しさを届けたい。
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地場産米をすべての酒に
原料米はすべて、地元半径5k以内で作ったものなのですか?
はい、そうです。江戸時代に水運が発達し、全国の米の流通が盛んだったのですが、酒蔵への米の流通はなかった。遠いところの米は酒造りに合わないということを知っていたんだと思います。もともと酒造りは飯米からスタートしていて、飯米でも好適米を上回る優位性があります。昔に戻っていくと地場米がいいとなります。
山田錦についてはいろいろ関わって、山田錦の無農薬栽培もやりました。でも、兵庫県の蔵で使うならとてもいいのですが、茨城県の弊社が使っても腑に落ちない酒ができてくる。今は近隣農家で作る「亀の尾系のコシヒカリ」をすべての酒に使用しています。
収穫から5ヵ月以内で使用することが大切なんですね。
米は変化が速いんです。足がはやい脂質が含まれているから。古米臭は収穫したその年度の内に出てしまいます。米の色が違ってくる。 脂質が変性する前に仕込みます。米の生育具合は毎日のように確認してきます。
「わたくしどもの酒造りはまさに神様にお供えする酒です。ここが基準です」と、蔵元のこの最後の言葉が心に落ちる。継承するぶれない指標が、蔵元を突き動かし、何よりも「郷乃誉」の魅力の基となる。
日本国内のみならず、世界のVIPがお忍びで須藤本家に訪れることもある。「郷乃誉」は、世界の目利きからの評価がすこぶる高い。
須藤本家/ 〒309-1701 茨城県笠間市小原2125 TEL. 0296-77-0152