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【蔵元訪問記】蔵元訪問記/金升酒造(新潟県)
2024.12.10更新
【蔵元訪問記】伊藤酒造(三重県)
-パッと食卓が華やぎ、飲む度に嬉しくなるお酒-
米の旨味がふわっと広がり、優しい甘味の余韻が響く。「鈿女(うずめ)」は、パッと食卓が華やぎ、飲む度に嬉しくなる、旨口のお酒だ。
水みたいに飲みやすい。日本酒じゃないみたいですね。とよく酒蔵が言われているが、それは寿司屋に置き換えると、味がしなくて食べやすい。お寿司じゃないみたいですね。と言われているのと同じ。
それで果たして良いのだろうかと疑問に思い、自分の代になってから酒質をお米の旨味がしっかりとある、飲みごたえのある甘口の酒質に変えたと話すのは、伊藤旬蔵元。「100人が飲んで50人が、なんだこの酒?後の50人がめっちゃ美味しい。を目指したのが僕たちの酒造りのはじまりです。」
–ティラミスと合うお酒–
イタリア酒ソムリエ協会が行っているミラノサケコレクションで「Party Goddess UZUME for Relaxation Level3 純米大吟醸」が銀賞を受賞。イタリアを代表する食品・料理とデザートなどと合わせて審査するフードペアリング部門審査ではベストマッチング賞も受賞した。イタリア人が選んだベストマッチングな組み合わせは、ティラミス。
ティラミスと合うお酒を求める人は、いままでのお客様とは全く違う客層だから、うちにとってはこの受賞はとてもプラスになったと話す。
–止まらない伊藤家の挑戦–
創業は1847年。現在は伊藤蔵元が杜氏として酒を醸す。
お酒だけを造っていると、お酒を全く飲まない層には何もお届けできない。酒蔵ならではの伝統的な発酵技術をもっと多くの人に届けるには、アルコール飲料だけでなく食品でないといけないと、動いたのはフードアナリストの資格も持つ娘の里華さん。
里華さんは酒造りにおける麹や酒粕の管理の一端を担いながら、発酵技術を活かした酒蔵パンや酒粕ジャム等の食品開発にも力をいれる。その食品を製造するのが、女将の喜子さん。一家全員がそれぞれの役割で存分にパワーを発揮している。
–awa酒への挑戦–
瓶内二次発酵という瓶内で炭酸ガスを自然に発生させる方法で製造したスパークリング酒を発売。三重県で初のawa酒協会認定のawa酒となった。スパークリング日本酒を醸す日本各地の蔵元で構成された一般社団法人であるawa酒協会が厳格な品質基準と第三者機関での検査をクリアした銘柄だけを「AWA SAKE」と認定している。
瓶内二次発酵は炭酸ガスを注入する方法で造られたものより、きめ細やかで舌触りの良い泡になる。発酵技術の技が詰まったお酒だ。
-酒蔵パンへの挑戦-
酒蔵パンを製造するのは、女将の喜子さん。
自家製酵母と酒米の米粉を配合して焼き上げる。有名なパン屋での修行を経て、2004年に蔵と同じ敷地内にパン工房が誕生した。今でこそ米粉配合の天然酵母パンは聞き馴染みがあるが、当時は誰もやっていなかった。最先端のパンを作っていた女将。
しばらく酒造りに入っていたためお休みしていたパン製造、この冬パワーアップして帰ってくる。
–酒粕ケーキへの挑戦–
濃厚なお酒を造る酒蔵の酒粕は、甘酸っぱくなる。
こんな酒粕が欲しいから、こんなお酒を造ってと指示するのは、粕屋でもある里華さん。
リッチ・シャイニーなど、酒粕の味わいによって使い分け、12種類に分けて管理しているという。酒粕をここまで管理している蔵を他に知らない。
この技術を活かしてつくられたのが、酒粕ケーキ。もちろんケーキの製造は女将の喜子さん。
「よくある酒粕がちょっと入っているケーキとは訳が違う。うちのは主原料が酒粕で、甘い酒粕だから、チーズケーキのようになる。」
–酒蔵の娘ならでは!–
里華さんは、酒粕だけでなく麹のスペシャリストでもあるという。
麹の温度湿度を調整して、どういう麹にしたいか社長の要望を聞き、それにあわせて調整をする。
彼女の研究がはじまったのは、なんと小学校の頃から。
「小さい頃から麹をもらって食べていました。でもあんまり美味しくない麹の時があって、幼心にももっと美味しくしたいと思ったんでしょうね。もっと美味しくするにはどうしたら良いだろうと、色々やってみたんです。ずっと舐めてるとどんどん甘くなっていくな。とか、ファンヒーターの上で温めておいたらめっちゃ甘くなったな。とか。美味しくなった時の喜びが今に繋がってるのかなと思います。酒造りは社長に任せて、私は酒母や麹のネゴシエーターです。酒母の状態をみて、今苦しいって言ってるよ。と伝えています。(笑)」幼い頃から微生物と触れ合ってきた彼女の感覚が酒造りに活かされている。
「いま私は食品部門の方に力を入れていきたい。酒蔵ならではの醸造技術や副産品を活かした商品で、日本酒を飲まない人達にも提案していきたい」と、前を見据える彼女を誇らしげに見つめるご両親の姿がまぶしい。この3人の家族にしか成しえない、ひとつの新しい酒蔵の形がここにあった。(武舍由莉)
【伊藤酒造】
〒512-1211 三重県四日市市桜町110番地
TEL:0277-72-2221
HP:https://www.suzukasanroku.com/index.html
オンラインストア:https://www.suzukasanroku.com/shopping.html