【蔵元訪問記】宮尾酒造(新潟県村上市)

2024.12.31

新潟県村上の地で文政2年(1819)に創業以来200年の「〆張鶴」の歴史を引き受け、紡いでいく宮尾佳明蔵元48歳。中学3年と小学校5年の男の子たちの父であり、名酒「〆張鶴」を醸す蔵元として、多忙な日々を送る。物腰が柔らかで、こちらの質問には静かに,ひとつひとつゆっくりと答えてくださる。直接酒造りはしないものの、宮尾酒造に脈々と伝えられている酒に向き合う気持ち、これが名酒の神髄なのか、「〆張鶴」の穏やかさはこの蔵元由来なのかと、思いを巡らせる。


2杯、3杯と杯が進むお酒

●今日はお時間いただきありがとうございます。宮尾蔵元は、こちらの酒蔵でお育ちになって、お父様の後を継がれたんですね?

長男ですから当然跡継ぎという形で戻りましたが、大学卒業後は新潟の百貨店に就職して3年間働きました。ある程度大きなところで働いて、組織でどう動くのかといったことを学びました。お酒売り場ではなく、いろんな売り場を担当させていただきました。


●宮尾酒造に入られたときは何かご自分なりの目標はありましたか?


まずは宮尾酒造という会社を知ることが大切で、入った当初はどうするか、といった目標はありませんでした。


●お酒造りはされるんですか?

現在は実際の酒造りの作業はしていません。製造責任者が仕切って、現在15人ぐらいで酒造りをしています。私は上槽後や瓶詰め前のきき酒をやっています。

数々の賞状↑
蔵見学の方々の姿も→


●入社されて20年ほどでお蔵元になられましたが、今までに変革はありましたか。

 私が入って、いくつか新しい商品を出しました。純米吟醸や季節商品等、何種類か出しています。その他、冷蔵倉庫を増設したり、設備投資も行っています。

●「〆張鶴」のバラエティーが豊かになったのですね。「〆張鶴」の酒をひとことで表現するのは難しいと思いますが、どんなお酒だと思われますか?


食中酒として飲んでもらいたい。酒単体より料理と合わせて。1杯で終わるんじゃなくて2杯、3杯と杯が進むお酒。杯が進むには、料理と合う、後にしつこさが残らないお酒ですね。「〆張鶴」はこういうお酒でありたい。

約50%は県外で主に首都圏に

●お酒は地元はもちろん、県外にはどのぐらい出ているのですか?


製造している約50%は県外で、主に首都圏です。輸出も何カ国か。アメリカ、オーストラリア、タイ、韓国、シンガポール等へ行ってます。


●今後はどんな展開をされますか?


若い方にもっと知ってもらいたい。我々は「〆張鶴」をたくさんの人に飲んでもらって、料理を一緒に食べて楽しい時間を過ごしてもらいたいです。どの「〆張鶴」を飲んでも、
「〆張鶴」らしい味を出していきたいですね。

昔、イラストレーターの故安西水丸さんが「〆張鶴 純」がお好きで、カレー屋さんで「〆張鶴 純」を飲む会をやったことがありました。カレーのスパイスと純のまろやかな感じが合うんですかね。案外いろいろな料理と「〆張鶴」は合わせられます。

新たに出した純米大吟醸

●最近出されたお酒があるんですね。


発売は4年前で、うちの商品になかった純米大吟醸の3種類。自社精米だから、精米歩合を調整できるので、これは30%にもしました。


●日本酒の魅力とは?


長年ずっと日本酒に携わってきた人が、米からアルコールを造る並行複発酵という日本酒独自の技術を高めてきた。その技術をもとに、米の違い、酵母の違いでお酒の味わい、特徴が蔵によって違う、というのが日本酒の魅力です。こういうことをも伝えていきたい。秋葉原で開催した日本酒のイベント「サケコレ」では若い人が多く、そういう方たちに伝えられたのはよかったです。

過日行われた「サケコレ」の宮尾酒造のブースには、いつも長蛇の列ができていた。丁寧なスタッフの方々の説明に耳を傾ける若者たち。多分そこで味わった酒の趣を、忘れることはないだろう。日本を代表する名酒のひとつだ。
2024年11月14日に発表された、第95回関東信越国税局酒類鑑評会で「〆張鶴 大吟醸( 米歩合35%)」が「吟醸酒の部」で特別賞を、「〆張鶴 純米大吟醸」(精米歩合35%)は「純米吟醸酒の部」では優秀賞を受賞した。

宮尾酒造のこだわり | 「〆張鶴」宮尾酒造株式会社



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