【蔵元訪問記】菊水酒造(新潟県)

2022.08.15

それは救世主のごとく誕生した

「ふなぐち菊水一番しぼり」は、1972年に日本初の缶入り生原酒として開発され、今秋に発売50周年を迎える。2018年には累計販売数3億本を突破した菊水酒造の売れ筋商品

御馴染みのふなぐち菊水

1966年、67年と菊水酒造は大水害に見舞われ、蔵は壊滅的な被害を受けた。さらに、この水害を機に県による河川改修が決定し、酒蔵の立ち退きまでも余儀なくされていた。

こういった苦難を乗り越えながら、1969年に現在の地に新工場が完成する。その3年後に、「ふなぐち菊水一番しぼり」は救世主のごとく誕生した。

生酒のフレッシュさを残しながら、火入れをせずに酵素の働きをコントロールできる酒造技術を見出し、紫外線を遮断できるアルミ缶を容器に採用することで、生原酒が抱える商品化の課題をクリアした。

1972年、日本初の缶入り生原酒として商品化に成功し、新しい日本酒のカテゴリーを確立する。その当時、酒蔵でしか味わうことのできない生酒の流通を可能にしたのだ。

テロワールの建築「菊水日本酒文化研究所」

 まさにこれは革命で、SNS上では「コンビニ最強酒」の愛称で親しまれ、日本のみならず海外にファンを広げている。

「ふなぐちをきっかけにして、お酒がある空間や、お酒によって人とひととのコミュニケーションがとれる楽しさ、といったことを皆さんに伝えていきたい」と語るのは市場開発本部マーケティング室の南波麻美子さん。菊水日本酒文化研究所を案内していただいた。

四季醸造で使用するタンク。木樽も

菊水日本酒文化研究所は五代目蔵元・髙澤大介氏が2004に年に設立し、研究開発機能、製造機能、人材育成機能、情報発信機能、交流機能を持たせた。

ここの醸造棟での日本酒造りは四季醸造。良いモノづくりを基盤としながら、面白いコトづくりを追求し、「モノ」と「コト」を融合させ新たな提案を創出する拠点を目指した。

酒で楽しむことを伝えるグッズの数々

また、各施設は単なる建築物としてではなく、北越後の魅力を取り込んだ「テロワールの建築」として評価され、2019年に日本建築学会の北陸建築文化賞を受賞している。

歴史を語る酒器たち

綺麗に清掃された建造物の中には、小さなアルミ缶の背後に拡がる景色、歴史、人々の想いなどがぎっしり詰まっていた。

数々の盃台

菊水日本酒文化研究所内にズラリと並ぶ酒器をひとつとっても、酒を通して伝えるモノであり、酒造を伝える膨大な書物は歴史が伝えるコト。

祝の席に欠かせなかった日本酒。

今は使われない徳利などの遊び心も伝わってくる。

炭を使って酒を温める燗どうこ。

新バージョンが加えられシリーズ化

新発田・北越後に訪れた方々に楽しんでいただける蔵をと、2019年からは本社敷地内に新たに売店と、庭匠・田中泰阿弥氏が手掛けた日本庭園の2つのスポットを公開。

10年熟成させた「ヴィンテージ熟成ふなぐち菊水一番しぼり」は、ここの売店限定の商品で、吟醸酒を缶で10年熟成させて商品化している。

また、「ふなぐち菊水一番しぼりスパークリング」が発売された。生原酒のエクストラリッチな味わいが炭酸の泡でさらに広がる。レモンやグレープフルーツ、柚子胡椒、梅干しなどとの相性がよく、幅広いアレンジが楽しめる。

 明治14年創業の菊水酒造は、1972年にいち早く伝統的な杜氏制を廃止し、先進的な機械設備を導入して合理化を推進、常識にとらわれない「菊水酒造」の体制づくりに取り組んできた。

そこで生れた「ふなぐち菊水一番しぼり」は販売網を広げ、「菊水の辛口」や「無冠帝」といったヒット商品も生れていった。2021年には創業140年を迎えている。「日本酒醸造・発酵食品製造の物づくり、日本酒の歴史、文化、愉しみ方等を様々にお伝えするコトづくり。菊水はこの両輪で日本酒を楽しくする蔵元です」(菊水通信より)

なお、「ふなぐち菊水一番しぼり」の50周年企画として、「菊水ポイントキャンペーン」を8月31日まで実施中。ポイントに応じたプレゼントに応募できる。        

【菊水造株式会社】
新潟県新発田市島潟750    
電話:0254-24-5111

菊水酒造HP

過去記事一覧

【蔵元訪問記】蔵元訪問記/天鷹酒造(栃木県)

2024.10.29更新

【蔵元訪問記】蔵元訪問記/岩瀬酒造

2024.08.14更新

【蔵元訪問記】蔵元訪問記 奥の松醸造元

2024.07.02更新

【蔵元訪問記】蔵元訪問記 お福酒造

2024.05.28更新

【蔵元訪問記】蔵元訪問記 柏露酒造

2024.05.06更新

【蔵元訪問記】蔵元訪問記 番外編 伊東酒造

2024.03.29更新

【蔵元訪問記】平六醸造(ひらろくじょうぞう)

2024.02.27更新

【蔵元訪問記】名手酒造店

2024.01.30更新

【蔵元訪問記】笹一酒造

2023.12.29更新

【蔵元訪問記】内ケ崎酒造店

2023.11.17更新

【蔵元訪問記】宇都宮酒造

2023.10.27更新

【蔵元訪問記】越後酒造場

2023.09.02更新

【蔵元訪問記】笹祝酒造

2023.07.18更新

【蔵元訪問記】石本酒造

2023.06.10更新

【蔵元訪問記】田村酒造場

2023.05.23更新

【蔵元訪問記】伊東酒造

2023.04.22更新

【蔵元訪問記】美寿々酒造

2023.03.10更新

【蔵元訪問記】権田酒造(埼玉県)

2023.02.15更新

【蔵元訪問記】伊藤酒造(三重県)

2023.02.12更新

【蔵元訪問記】信州銘醸(長野県)

2023.01.08更新

【蔵元訪問記】王紋酒造(新潟県)

2022.11.12更新

【蔵元訪問記】末廣酒造(福島県)

2022.06.26更新

【蔵元訪問記】近藤酒造(群馬県)

2022.06.15更新

【蔵元訪問記】大利根酒造(群馬県)

2022.05.15更新

【蔵元訪問記】塩川酒造(新潟県) 

2022.05.01更新

【蔵元訪問記】 明利酒類(茨城県)

2022.04.15更新

【蔵元訪問記】無法松酒造(福岡県)

2022.02.09更新

【蔵元訪問記】土井酒造場(静岡県)

2022.02.04更新

【蔵元訪問記】藤井酒造(広島県) 

2022.02.04更新

【蔵元訪問記】田村酒造場(東京都)

2022.02.02更新

【蔵元訪問記】猪又酒造(新潟県)  

2022.02.02更新