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【蔵元訪問記】蔵元訪問記/金升酒造(新潟県)
2024.12.10更新
【蔵元訪問記】 明利酒類(茨城県)
水戸駅から車で10分足らずで到着する明利酒類。江戸時代末期に創業した加藤酒造店の事業を継承し、明利酒類株式会社として創立。清酒、焼酎、リキュール類、発酵調味料、医薬部外品等を造る総合酒類メーカーとして全国に販路を持つ。日本酒は南部杜氏が率いる7名で製造している。執行役員技術部長の皆藤茂樹さん、酒類販売部の草野洸さんにお話を伺った。
◆「アルコール」の販売元として
●清酒製造の免許を取得して、水戸黄門に因んだ「副将軍」の名で販売を始められたんですね。
草野 明利酒類が、栃木県と茨城県の蔵が出資した会社で、日本酒を安定的に造れるようにと、醸造用アルコールを販売しました。明利酒類としてはこのアルコールの製造が起源と言えます。醸造用アルコールは現在240社ほどの酒造会社へ販売しています。そのほか酵母やリキュールなどの原料用アルコール、味噌用のアルコールとか、麺類に添加するアルコールなどもあります。
皆藤 醸造用アルコールの原料は糖蜜。65度くらいまで連続蒸留器で蒸留してできあがるものです。アルコール添加は酒造りの技術で、香りがしっかり出ます。こだわった杜氏さんは、醸造用アルコールを寝かせてから添加する。伝承されてきた酒造り技術の一貫であり、戦後の三倍醸造酒のアルコールとは意味合いが違います。
最近は、コロナ禍で余ってしまったというメーカー様のビールを蒸留しました。結構な数の依頼がありました。これはウォッカやジンなどスピリッツの原料になります。
草野 新型コロナウイルス感染症の発⽣に伴う特別措置で、手指消毒用エタノールの代替品として使用し、飲用不可の表記他一定の措置を講じた上で税務署へ申請をすれば、という国税庁の発令がありました。それにのっとって発売した「メイリの65%魁YELLOW」は日本酒由来の高濃度エタノールにレモン香料を加えました。しっとりして、柑橘系のさわやかな香りがあります。
◆酵母の開発
●アルプス酵母の7号、香露の9号、小川酵母の10号は現在清酒の代表的な酵母で、醸造協会でも全国の酒蔵へ販売しています。小川酵母はこちらで開発されたんですね。
皆藤 小川酵母からできる酒の特徴は、酸が少なくて「酢酸イソアミル」系のバナナ様の穏やかな香りがあります。食中で飲んでも幅広い肴と合うことをコンセプトに、含んだときの含み香を重視しました。
●小川酵母は、全国の日本酒のグレードアップに寄与しています。酵母の発見、開発と相当な労力と年月が必要だと思いますが、今後も新しい酵母の開発など考えていらっしゃいますか。
皆藤 はい、開発中です。まもなく発表できると思います。
●明利さんの功績は、清酒業界はもとより、他業界にも役立っていますね。
◆新しい入口
●Vチューバーさんとのコラボのお酒が話題になっていますが。
草野 ホロライブ3期生の兎田ぺこらさんとのコラボでは、「百年梅酒ぺこらver.」を発売。後にホロライブ5期生の雪花ラミィさんとともに、「ラミィの日本酒造りプロジェクト」を開始しました。「副将軍大吟醸」をベースに、麹米に山田錦、掛米に美山錦を使って、淡麗辛口でありながら、フルーティで華やかな吟醸香のある「大吟醸雪夜月」ができあがり、イラストレーター肋兵器先生が描いたデザインをラベルにしました。若い方々から多くのアクセスがあり、ご好評をいただいております。
●飲んだことのない方には、飲むきっかけになりました。これも日本酒需要の底上げになりますね。
草野 若い方が関心を向けてくれるコラボのお酒を入口にして、今後も飲んでもらいたいです。広く情報発信をして、まずは飲んでいただける機会を作りたい。技術部長は良い酒を造る、営業は入り口を拡げる。遊び心のある商品を出して、これからはネットにも力を入れていきます。
(取材後記)
皆藤氏に長年の酒造りで印象に残ったことを聞くと、2011年の東北大震災だったと語った。草野氏はちょうど入社する年で、手伝いに駆け付けていた。積んであったパレットは総崩れし、何万本という酒瓶が割れた。
その片付けに追われながらも、断水した周辺に井戸水を運んだ。向いの中学校には100トンタンクに井戸水を詰めて届け、病院には2トン車を使い、パン屋用にも1万4000リッターのタンクローリーに水を詰めたという。
敷地に5か所ある井戸水は中硬水で、甘味のある良い水ですよと皆藤氏。いついかなるときでも、明利酒類は博愛に満ちていると感じた。これまでの日本酒の発展を担い、今後の道先案内人にも、なるかもしれない。
【明利酒類】
茨城県水戸市元吉田町338番地
https://meirishurui.com/
TEL 029(247)6111