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【蔵元訪問記】(秋田県)
2025.07.10更新
新企画「日本酒はお好きですか?」
著名人インタビューを復活させました。
かつて、俳優、作家、ミュージシャンの方々など著名な方のインタビュー記事をビミー紙面にて掲載していましたが、この度新企画として復活!今後は、「蔵元訪問記」に代えて、不定期に掲載します。
著名人と言われる方の中には、いつも何らかの覚悟が構えています。覚悟して生きてきたからこその名声であったり、功績があるはずです。そしてちょっぴり息抜きの時間に日本酒はなかったですか? 日本酒はお好きですか? 著名人だからこその深みのあるお話、日本酒の嗜みをお伝えしていきます。
落語家 蝶花楼桃花

蝶花楼桃花氏の日本酒歴のなかには、名作漫画『夏子の酒』の作者である尾瀬あきら氏の存在があります。尾瀬氏が描いた落語漫画「道楽息子」が縁をつなぎました。
「尾瀬先生に日本酒をめちゃくちゃ教えてもらいました。ただ私は、飲む専門で、これ飲んだ方がいいよって尾瀬先生に薦められたら、何もわからないで美味しい、これ好きとか言うと、わかるね~、美味しそうに飲むねって、喜んでくださいました」と桃花氏。
そう聞けば、日本酒通のうんちくが飛び出すのかと身構えましたが、ただ美味しかったことしか覚えてないですよ、愉しく飲むだけです、と嬉しい一言。インタビューの場所は名酒センターで、まずはお酒を選んでいただきました。


「二つ目」のときは、ぎゃあぎゃあ仲間と飲んでいたけれど、今は年齢を重ねたというのもあるけど、一人で飲むようになり、おうちでひとり、ゆったりゆったりなお酒の飲み方になってきたそうだ。来年で入門から20年目の若手噺家のホープ蝶花楼桃花氏に、少し日本酒を飲み比べながら、今までのこと、そしてこれからの希望を語っていただきました。
名酒センターで選んだ日本酒三種類



落語家 蝶花楼桃花
CHOKAROH MOMOKA
今までやってきたことの先に落語があった
専門学校でミュージカルを学んでいながら、自国の文化を知らずにこのまま表現者になっていいのだろうかと思うようになり、日本の伝統芸能を学ぶ劇団に入りました。そこに狂言や落語があって、こんなすごい文化が日本にあったのかって、のめり込んでいって、数年して現師匠小朝のところに入門しました。
トントン拍子にいってしまいました。子どもの頃からそういう環境があったり、すごく詳しかったりしたら、むしろおじけずいたかもしれないけれど、勢いで25歳で入門しました。

誰にも相談しなかった。親にも事後報告。ミュージカルとか言ってた子が小朝師匠の弟子になった?ってびっくりされましたが、反対はされはなかった。私の中では、全然別路線にいったということではなく、落語はミュージカルからの地続き上にありました。
師匠小朝のところに行った勇気を、自分を褒めたい。昔の私を褒めてあげたいところです。
女ということを言い訳にするのはご法度
入門して来年で20年になりますが、いろいろなことがありました。覚悟してはいたし、ある程度は許容範囲内でしたが、この世界は男性仕様で出来ています。
トイレは男性のものひとつしかない。隠しながら着替えるのも気持ちの良いものではないですし、インナーを着てました。今少しずつ変わってきてますが、20年前は男の世界へ勝手に入ってきたんだから、そっちが合わせて、という感じでした。男性と同じ量を食べて、同じ重さのものを持つ、化粧はしない。すっぴんです。

とにかく、女ということを言い訳にするのはご法度で、男と同じことをできないんだったら帰ってくださいと・・・。ファンとかもすごく拒否反応を示し、「女が落語すんな~」って叫ばれたり、席を立ってしまって、私が終わると戻ってくる。女は聞かないよ、っていうアピール攻撃みたいなものが前座時代には特にありましたね。
おまえの聞きに来たんじゃねえぞって言われて、
「ついでに聞いていただきましてありがとうございました」って笑って交わすしかない。

落語特有のルールもたくさんあります。プロになると客席には戻れない。お金を払ってお客様として観ることはできない。袖から観るしかありません。
発生練習をする習慣はあまりないですし、前座は寄席ではマイクは使わない。鏡を見ながら稽古するのはあまり好ましくない。
古典落語のお酒を飲む仕草は日本酒を飲む仕草です。水を飲むときは腕を上げてこうなんだけど、お酒を飲むときは口から迎えに行って飲む。その感覚的なものを体得します。

たとえば、オーデイションを受けたら落ちることもあるけど、とにかく前座修行は、この修行を堪えれば一人前にしてもらえるんです。それくらい堪えますよって。もちろん、辛いときもありましが、堪えたら私一人前になれる、という希望がありました。
これからの、真打・桃花
真打になって3年。ありがたいことに、今は高座のない日がほとんどありません。二つ目時代は、聞いてくださる方全員が私をめざし、小さい会場だけど自分の落語だけを聞きにきてくれた。
真打になって寄席に上がらせていただくと、落語を観たいからと、不特定多数の人が、私を知らない方も多数いらっしゃいます。そういうお客様を、今日はどんなだろうと観ながらネタを選ぶ、ということも勉強させていただいております。

今回の「夏の独演会」は、回る場所を増やして、テーマやネタを決めずに、その土地その土地に合わせたネタで回りたい。場所によっては全然違うネタになります。今年はたくさんの人に会いたという気持ちでやらせていただいています。
きのうの神戸はこうだったけど、今日の大阪は3席とも違うとか、その位お客様に合わせてやってみたいと。天気や、夜か昼でも違ってきます、初心者か、聞き込んでる方が多いのかとか。お客様の反応と肌感覚で決める。たまに間違うこともありますけどね、そんなときはリカバリーします。

まだまだ響いてないですが、同世代の女性に引き続き発信していきたいです。かっこつけたり、可愛い子ぶったりしないで、等身大の自分をさらけだして同性に共感してもらいたい。
先日、私と同じ靴をはいている女性がいて、桃花ちゃんと同じよって嬉しそうに言ってくれた。こういう方がちょっとずつ増えてきた。従来のファンの皆さまを大切にしつつ、こんなお客様を増やしていけたら嬉しいです。
落語する内面の筋肉を鍛えてくださいと、今滋味なパーソナルトレーニングに通っています。先輩たちのようにしゃんと正座し続けていきたい。

それと、ちょっと最近は料理してみようかなと思い立ち、作れば満足感とやったぜって充実感がある。お酒と合わせて、そんな豊かな時間をこれから持ちたいです。
*落語家の階級「前座」「二つ目」「真打」ー 桃花の所属する落語協会では入門してから、数ヶ月〜1年の間は「見習い」として、師匠の家の雑用などをして、師匠に認められた後に寄席で働かせてもらえるようになり、「前座」として、お茶出しから、トップバッターとして高座をつとめさせていただくこともある。3〜5年間の修行の後に「二つ目」に昇進。雑用から解放され、「羽織」を着ることも許される。「二つ目」で10年ほど経て、師匠や所属団体に芸を認められて「真打」。「真打」になると、弟子を取ることが許され、「師匠」と呼ばれる。
蝶花楼桃花/ちょうかろうももか プロフィール
2006年、春風亭小朝に入門。春風亭ぽっぽとして前座修行を開始する。二ツ目・春風亭ぴっかり☆時代に「浅草芸能大賞」新人賞を受賞。「NHK新人落語大賞」では3度にわたって決勝に進出する。2022年3月、真打昇進。10日間連続独演会、全国ツアー、海外公演など若手としては異例づくしの落語活動を展開し、「笑点」若手大喜利・女流大喜利をはじめとするテレビ出演や、ラジオ番組のパーソナリティも多数。女優として明治座「ふるあめりかに袖はぬらさじ」(主演・大地真央)など舞台公演、沖縄国際映画祭出品作品「耳かきランデブー」(主演)など映画にも出演する。
▶インフォメーション
「西川流2025名古屋をどりNEO奇者」に蝶花楼桃花がゲスト出演!

「西川流2025名古屋をどりNEO奇者」/岡谷鋼機名古屋公会堂/2025年10月11日、12日
【お問い合わせ】西川流家元_名古屋をどり
2025名古屋をどりNEO傾奇者 2025/10/11.12 岡谷鋼機名古屋公会堂|西川流家元_名古屋をどり