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【蔵元訪問記】蔵元訪問記/金升酒造(新潟県)
2024.12.10更新
【蔵元訪問記】信州銘醸(長野県)
信州銘醸(株)は、生産売り上げの75%強が日本酒。その他リキュール、アルコールでない甘酒、そして漬物に使う酒粕などの食品を展開していているが、2022年12月、食品でない新ジャンルに挑戦している。発売された商品名は、「瀧澤ハンドクリーム」。代表取締役である滝澤恭次氏にお話を伺った。
*差別化を図る商品コンセプト*
「お酒でハンドクリームを作りましょうと、日本製紙株式会社さんから1年前にお話がありました。最初は戸惑う思いが強かったんですが、全国多々ある酒蔵の中からなぜうちにラブコールしてくれたのか聞いたところ、国内、海外のお酒のコンテストで、賞を受賞している数が圧倒的に多い、という事前調査の結果と、長野県和田峠の天然水で超軟水の『黒耀水』を使って商品化している、ということがポイントでした。
全国の日本酒メーカーの化粧品を調べたところ、15社以上がハンドクリームや乳液、化粧品分野で商品を出していて、原料は普通酒や酒粕が多いです。差別化を図るためにも、弊社はは世界的に品質を評価されている『瀧澤純米吟醸』を使う、というのが商品のひとつのコンセプトになりました」
「瀧澤純米吟醸はフルーティーで飲み易く、国内でも人気のお酒ですが、こちらを使うことによって、どんな商品になったのですか?」
「効果効能は人によって違うとは思いますが、『瀧澤』の仕込水である超軟水黒耀水は、魔水と言う人がいて、生け花を水道水と黒耀水に入れて比較したところ、水道水は3~4日でしおれてしまい、黒耀水に生けた花は1週間以上元気でした。
黒耀は太古の火山噴火で形成された岩盤層で、雨水が年月をかけて、この層で濾過され、水のカリウムやマグネシウムなどのミネラル分が限りなく0に近く除去されて、ピュアな水として湧き出る天然水です。
微生物が水のミネラル分を栄養素として増殖しないから、水自体が腐りにくいようです。日本酒を造る杜氏(とうじ)の手がすべすべで美しく、日本酒は化粧品としての効能が昔から注目されていました。
また日本製紙さんのグループでは化粧品の新素材CNF(セルロースナノファイバー)を開発しました。CNFは木材繊維をナノレベルまで細かく解して、石油系界面活性剤の代替となります。このCNFの可能性を化粧品用途で広げていきたい、との要望も重なりました。
天然由来のCNFはヒアルロン酸に代わる保湿成分になります」
「効果のほどはどうでしょうか?」
「保湿効果があるけれど、べたつきが少ないというアンケートの結果が出ています。価格は30g入りで1200円(税抜き)です。フレッシュさを生かすために使い切りサイズで、他のメーカーから見るとツーランク小さく、持ち運びに便利なコンパクトサイズです」
*代表者としての信念と苦悩*
「代表に就任して5年目の新規参入ですね」
「今は、日本酒と聞いただけで飲まない人が多いんです。日本酒にはいろんな味があるのに、日本酒は頭から嫌だという人もおります。
そういう人たちにハンドクリームを通して、へぇーこんな日本酒もあるんだと、日本酒に振り向いてもらえるきっかけになる商品になることを期待しています。
弊社は『厳守相伝と挑戦』を、日本製紙は『木とともに未来を拓く』をスローガンにしています。両社とも自然を生かしたものづくりとしてタイアップし、お客様に喜んでいただける、より優れた商品を目指しました」
「この5年は、どんな年月でしたか?」
「入社して9年間製造部門にいて、長野県の巨匠といわれた杜氏の下で修業していたのですが、32歳のときに営業部門に異動。一般営業は10年、営業部長になって6年ぐらいで社長に就任しました。
製造のころは、10月からゴールデンウィークぐらいまで、半年間で6日か7日ぐらいしか休みがなかった。そういう現場の大変さを知ってはいるけれど、営業に行って貴社はトレンドを見ていない、なんて言われたことも。
5年前に社長になったときは、会社全体を盛り上げていこうと決意しましたが、未熟な私のカラーに染めることにはそもそも矛盾が発生し、一からの出直しに気づきました。
社長になると、原価計算・現場の労働環境・売上げ・将来への見極め・社外的なお付き合い。すべてを平等に見て、すべてを持ち上げなきゃならない。この5年で少しずつわかりました」
*主力ブランドについて*
「社員が14人、季節雇用者が9人、総勢23人を率いて社長自らも営業周りは怠らない。主に「瀧澤」ブランドの営業に力を入れてらっしゃるのですね」
「製造部門の時代、黒耀水を仕込水にしたら酵母の働きが悪くて発酵が進まず、通常が20日で仕上がるのに24~26日かかりました。なぜこうなったか勉強して2年目に手応えを感じ、3年目に純米らしい味なんだけど、すっきり感が他の純米酒よりありました。
黒耀水を生かした『瀧澤』ブランドができあがっていったんです。
発酵が遅いということは、例えば煮物を強火でやるのと、弱火でやるのとどっちが美味しいか?といった感覚です。『瀧澤』ブランドは17年目ですね。コロナ影響により落ち込んだ売り上げも、今年は少しずつ回復しています。特醸しぼりたて生酒は相変わらず好評ですね」
「鼎(かなえ)というブランドにも人気が出ていますね?」
「信州銘醸は4つの会社の合弁会社なんですが、私の先祖は400年ぐらい前の1833年に酒蔵を開業し、滝沢酒造を設立しました。なので、私は初代から数えると10代目の蔵元です。現杜氏の工藤杜氏、工場長の吉池を中心に奮闘しております。
工藤杜氏、吉池工場長、私と皆農大の卒業生なんですね。この3人でトレンドに流されるような酒じゃないものを造ろう、ということになりました。それが「鼎」で、発売から10年ぐらいになります。鼎は中国古代の器物の一種で足が3本あることから、鼎立(ていりつ)という言葉が生れ、3つの勢力が並び立つ状態を表します。
米はその年によって豊作、不作あり、そういうことも理解してもらえる人、米によって味が変わることも理解してくれ、こういう米ができたから、酒はこうだと理解していただける人にご愛用を頂いている気がします。
*いろんな選択肢を提供したい*
「造りの背景を理解して飲むとまた味わいも変わりますね。今後はどの様に舵をきっていかれますか?」
「地元の人たちが、昔からの普通酒をご支援して下さってきたからこそ、今の信州銘醸があります。中高級酒を造り、県外、海外へも販路は拡げていますが、地元重視の普通酒をなくす考えはありません。
減少傾向になっていく酒の生産を調整し、その減少した部分は他のところで補っていく。高級酒を好む方もおりますが、普通酒の方がいいよ、という若者もいます。
昨今、昔の街並みを生かし、レトロな文化をPRしようとする動きが出ています。レトロを求めて来る観光客が増えていると聞きますし。昔はこんなお酒でこんなふうに飲んでいた。
今はこんなスタイルでこんな酒がある。その両方を伝えて、自分はどっちがいいかを掴んでくれたら、嬉しいなと思います。いろんな選択肢を提供したいです」
「日本酒には、いろんなチャネルがありますね。本日は長い間ありがとうございました。先ほど少しいただいてつけた「瀧澤ハンドクリーム」が、しっとり馴染んできました」
★信州銘醸商品ラインナップ
清酒
『秀峰 喜久盛』純米吟醸、純米大吟醸、大吟醸、本醸造、『明峰 喜久盛』純米酒、普通酒、あまくち、からくち、『梁山泊』吟醸酒、『瀧澤』本醸造、純米、純米吟醸、純米大吟醸他
リキュール類
清酒で仕込んだ梅酒、松茸酒
【信州銘醸】HOME of 信州銘醸 (shinmei-net.com)
酒蔵:長野県上田市長瀬2999−1
電話:0268-35-0046