【蔵元訪問記】塩川酒造(新潟県) 

2022.05.01

新潟駅からJR越後線に揺られ、車窓から連続的な市街地を眺めていると20分ほどで内野駅に着いた。南口を出るとそこは内野町。辺りは住宅が立ち並び、ベッドタウンといった様子だ。アパートや自転車の若者が多いのは、新潟大学が程近いからだろう。広い町ではないが、3軒も酒蔵がある。今回訪れた塩川酒造は内野駅から徒歩7分ほどに立地していた。看板などは出ていないが、大きな酒林が現れここが目的地であるとわかった。

四代目蔵元・塩川和広さん(写真:新潟県酒造組合)

県内先進の山廃造り

建屋の端の煙突を眺めていると、事務所の入り口が開き塩川和広さんが出迎えてくれた。

塩川さんは大正元年より続く塩川酒造の四代目蔵元。

広島県の醸造研究所にて2年間の修行ののち入社。

当初より常に革新を求め挑戦を続けることを信念とし、現在は蔵元杜氏として塩川酒造を牽引している

塩川酒造は大正より「越の関」を主力銘柄として醸し続けているが、見逃してはならない銘柄が他にもある。

新潟でも多くない山廃酛を採用した「願人(ねがいびと)」だ。

もともと山廃酛をやっていたわけではなく、これも塩川さんの行ってきた挑戦のひとつ。

塩川さんが20代前半の頃、当時の新潟は淡麗辛口酒のメッカ。

塩川さんも日本酒はそれでいいと考えていた。

しかし、醸造研究所在籍時に出会ったとある酒を飲み、感動。

その酒は山廃造りの濃醇旨口なものであったが、こういう酒を造りたいと強く思ったという。

そこから淡麗辛口一辺倒な当時の日本酒に疑問を感じ、入社後も追求を続け2009年に製品化。

現在もその骨太な味わいと優しい燗上がりで根強いファンを増やし続けている。

2011年には山廃造りの技術を生かし、海外輸出を大きく視野に入れた肉料理専用酒「COWBOY YAMAHAI」を展開。

脂の多いステーキなどと合わせても味が負けず、程よい酸味が脂っこさを洗い流してくれる。

「願人」純米吟醸原酒(左)と純米酒(右)

海外での挑戦

塩川さんの挑戦は常識にも囚われない。

海外での酒造りに挑むため、2011年に単身でバリ島へ飛んだ。

日本酒の醸造設備などあるはずもなく、なんと現地でDIYをし、代用品や代用方法を試行錯誤して酒を造り上げた。

その後も数カ国でそれぞれの気候風土を活かし醸造に成功。

各国で数種類の方法にて酒を造り、現地で試飲してもらったところ、どの国でも「醪の温度管理をした酒」よりも「常温で醸造した酒」の方が好評だったという。

日本に帰国後、その醸造方法で酒を造り国内でも試飲をしてもらうとこれも好評。

製品化に踏み切り、唯一無二の日本酒「のぱ」が誕生した。

「のぱ」という銘柄名は、アメリカでの醸造時にその味を絶賛したサンフランシスコのレストラン「NOPA」から由来している。

「のぱ」は淡いトパーズ色。濃醇な旨味が複雑に絡み合う。

挑戦は終わらない

塩川さんは言う。

「日本酒の味わいの幅はまだまだ終わりじゃない。これが正解だ、という当たり前を打破していきたい。」

製造石高200石、決して大きい酒蔵ではない。しかし、いや、だからこそ次々と新たなことに挑めるし、そうすべきなのだろう。

塩川酒造が展開するラインナップの味わいは多様だが、私はそこに確かに「塩川酒造」という一貫した個性を感じる。

塩川さんが夢を語るように取材に応えてくれたことで、それは塩川さんの足跡なのだと理解した。

塩川酒造のこれからに、目が離せない。

こちらも塩川さんの挑戦のひとつ、赤い外皮を持つ古代米の玄米で醸造した赤い日本酒「生酛系 古代」。ポリフェノールを含み、赤ワインと日本酒のブレンドのような淡い苦味と酸味は肉料理と好相性。

【塩川酒造株式会社】
〒950-2112 新潟県新潟市西区内野町662番地
TEL: 025-262-2039
FAX: 025-555-4006

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塩川酒造 HP

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