【蔵元訪問記】末廣酒造(福島県)

2022.06.26

観光都市会津若松

東京から郡山まで東北新幹線に乗り、そこから会津若松までは磐越西線で約60分。決して便のいいところではないが、鶴ヶ城や白虎隊で知られる歴史と伝統文化が息づく会津地方の中心地で、磐梯山や猪苗代湖などの自然景観にも恵まれた観光都市。この会津若松を代表する酒蔵が末廣酒造だ。

嘉永蔵正面

末廣酒造の最寄り駅は只見線の「七日町駅」で、この駅からの通りは「七日町通り」と名付けられている。大町四ツ角を起点とした会津五街道のうち、越後街道、米沢街道、日光街道が通る西の玄関口で、毎月7の日に市が立ったところから命名された。

明治から昭和初期に建てられた蔵や洋館、木造商家が残り、大正浪漫が漂う街並みに、手打そば、ラーメン、イタリアン、フレンチ、日本料理など様々な飲食店やスイーツ店、会津伝統の漆器、絵ろうそくの店、造り酒屋の姿がある。

末廣酒造嘉永蔵

末廣酒造嘉永蔵は七日町駅から徒歩8分ほど。レトロな趣の正面門、煉瓦塀、三号蔵、四号蔵等、登録有形文化財に全9箇所が登録されている。嘉永蔵の建築物の大部分だ。

1850年(嘉永3年)の創業なので、「嘉永蔵」としている。ここから10㎞ほど離れた会津三里町には、末廣酒造「博士蔵」がある。平成8年に、7代目の現蔵元・新城猪之吉氏が建設した。この地を選んだのは水が重要なポイントで、水質調査をして検討した結果、水質のよい三里町に決定。最新の設備を整えて、末廣酒造から出荷するほとんどの酒を醸造している。

近代的な博士蔵
瓶詰め
海外への出荷

嘉永蔵で造るのはオリジナルブランド酒。

末廣酒造の売店でしか販売しない酒とか、いくつかの市町村からの依頼で、リクエストの米や水で造るオリジナルブランド酒‥など。

予約不要の酒蔵見学

予約が不要な酒蔵見学は10時から16時までで、案内所要時間は30分。

漆喰でできた大きな観音開きの扉の向こうに仕込蔵があり、実際ここで酒が造られる。見学は、この仕込蔵のホワイトボードに書かれた醸造工程の説明からスタート。酒米の稲の展示もあり、酒米の特徴や精米についてなどもわかりやすく教えてくれる。

釜場には和釜が2基、浸漬タンク、洗米機などが並ぶ。

古酒蔵では、大吟醸を1979年から年代別に貯蔵している。ずらりと年代物の瓶が並んだ風景は圧巻だ。貯蔵した大吟醸酒の販売もしている。

価格は、4合瓶の場合だと、元の酒の価格プラス「年数」×500円。例えば30年熟成酒だと、元の価格に15000円をプラスした値段になる。

おもてなし

30分の見学時間内に、盛沢山の日本酒の知識を仕入れた後は、末廣酒造のショップにて試飲体験が待っている。他では販売していないお酒を試飲でき、気に入れば買って帰れる。

また、蔵内にある喫茶「杏」では、仕込水使用のコーヒーや甘酒、大吟醸を使ったシフォンケーキ、酒ゼリーなども楽しめる。

なんとも至れり尽くせりの酒蔵見学で、他にはない熟成酒を手にすることができるのがうれしい。

初めての外部杜氏の導入や、山廃造りの確立を図ったことで知られる末廣酒造だが、常に飲み人の楽しみを追究してきた軌跡が、明白に感じられた。

「試飲会などで僕と会って話をした人は、ほとんどの人が蔵に来てくれるんだよ」と、にこやかに話す新城蔵元。

海外への進出も早く、当初の苦労話は絶えないが、人をもてなす心意気が、これからも販路を大きく広げていくに違いない。(竹林ゆうこ)

【末廣酒造造株式会社】
嘉永蔵 (かえいぐら)福島県会津若松市日新町12-38      
TEL:0242-27-0002 博士蔵(はかせぐら)福島県大沼郡会津美里町字宮里81 TEL:0242-54-7788 

末廣酒造の酒を飲んでみる

 末廣酒造HP

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