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【蔵元訪問記】蔵元訪問記/金升酒造(新潟県)
2024.12.10更新
【蔵元訪問記】蔵元訪問記/天鷹酒造(栃木県)
天鷹酒造の「有機純米大吟醸天鷹」は、全国新酒鑑評会にて、金賞を通算3回(2024年現在)受賞。さらに、イギリス、フランス、ベルギー、イタリアなど世界各地のコンテストでは軒並み高評価を得ている。
「2000年にJAS法ができて、2004年に申請して1度落ちてます。基本が出来ていませんでした。手を洗い、帽子被って長靴はいちゃだめ。長靴はいて帽子かぶってから、手を洗わなくちゃいけない。要は体系的に勉強してなかった。熱湯消毒といっても人によって認識がちがう。すべてやってるつもりだった。一度落ちてよかったかも。社員の意識が変わりました。
また、オーガニックはよくわからないとか、高くてまずいなどと言われてた時代ですが、だったら、誰もが‘‘美味しい‘‘と言う酒を造り、全国新酒鑑評会では金賞を獲得し、世界中に認められる認証を取る目標を立てました」と天鷹酒造蔵元・尾﨑宗範氏。
2005年、有機認定事業者となり、2013年にはEU・アメリカの有機認証取得。2017年に全国新酒鑑評会で初めて「有機純米大吟醸天鷹」が金賞受賞。全国で唯一の有機日本酒での快挙だ。12年かけて夢が実現し、2018年には有機専門の農地所有適格法人「天鷹オーガニックファーム株式会社」を設立する。
現在、有機の酒は全体の1割だが、将来的には「九尾」を除く「天鷹」はすべて有機を目指す。
久しぶりに伺った天鷹酒造には、4年前に蔵に戻った後継者・尾﨑俊介氏の姿があった。
有機日本酒に取り組むきっかけ
天鷹酒造と言えば有機という印象ですが。日本に少ない有機日本酒に取り組むきっかけはありましたか?
蔵元 日本酒の級別が廃止されたとき、地元の酒屋さんたちと勉強会を開催しました。ああだこうだと話合い、栃木の土地に拘った米と水と酵母と栃木の杜氏で酒を造っていこうとなった。
それをどうお客様にお伝えするか。まずはここに来ていただこうと。お客さん皆さんで、春は田植え、夏が草刈り、秋は収穫、冬に酒仕込んで春先に出来た酒を皆んなで飲むというめだかの会「米作り酒造りの会」が始まり、20年続きました。
この活動が起点となり、有機から天鷹オーガニックファームの設立に繋がったんです。
米作りは、醸造部の方がやるのですか?
蔵元 醸造部が中心ですが、他の部署の人もやります。蜂蜜酒は四季醸造ですが、日本酒は3期醸造。田圃で田植えから始めて稲を収穫したら、すぐに酒造りに取り掛かります。
田圃から醸造まで一貫して行うデメリットはないのですか?
蔵元 一年中忙しい事です。しかし、収穫前から米の出来が判ってます。また、この田圃のほうが麹米に向いてるとか、あちらは違うなどと米に合わせた酒造りができる。将来は酒に合わせた酒造りが出来ればメリットしかない。
▲天鷹酒造内にある精米機
全量自社精米している事も活きてきます。「五百万石」、「あさひの夢」を自社農地で、その他にも契約農家さん4軒で作っています。酒の醸造総石数は1100石です。
「山田錦」を栃木県産の「夢ささら」に代えて醸造する、という宣言をされましたね。
蔵元 はい。「夢ささら」も間もなく有機で作ります。山田錦と栃木県の開発品種の掛け合わせの「夢ささら」ですが、山田錦とは酸の出方が違う。後味がすっきりします。精米25%まで削れたので、大吟に対応できます。これを含め、昨年は98%県産米を使用しました。
「九尾」は変化させる挑戦の酒
七変化の酒「九尾」が話題ですが、那須の伝説の霊獣「九尾の狐」からの命名ですね。日本酒初心者の人にも支持されている。
蔵元 原料米や精米歩合、酵母を選び、醸し方も変えて、毎回異なる酒にする製造スタッフの発表の場です。
「天鷹」は安定の商品ですが、「九尾」は変化させる挑戦の酒。いろんなお酒をやって勉強になるし、「天鷹」にもフィードバックされます。
▲床、壁、天井も水洗いできる酒造施設
有機は安心を、「九尾」では楽しいワクワクを届けたい。今後は2か月に1回の割合で商品化したいです。
尾﨑専務は造りから営業までこなされているんですね。
社内で何でもやらせてもらってる。ありがたいです。造りは経験したとしないとでは全然違ってました。今33歳ですが、もっといろいろ学ばなければいけない。
「天鷹」のお酒のレベルは高いと評価されていますから、今後の時代に合わせて様々な方に届けられる試みをしたいです。
日本酒「天鷹」の魅力はどんなところだと思いますか?
「辛口でなければ酒ではない」という創業から受け継がれたポリシーには賛同します。僕も飲むときはそういう酒がいい。それが食事にも合うしその人の好きなように飲める。温めても冷たくてもそのまま飲んでも、割ってカクテルにしてもいける。日本酒は自由こそが魅力です。(尾﨑専務)
お蔵元は、心強い後継者と共に、今後はどんな展望をお持ちですか?
粛々と、今やってることを進めてまいります。基本的には自分たちの作った米で自分たちの思う酒を造っていく。この大田原でできる他にない酒を造っていきます。
天鷹酒造で使用した水は浄化層に9日間貯めて、微生物で浄化してから排水するという。そんな気遣いが、星天が日本一綺麗な街を守り、守られた土地を活かして美味しい、安心、楽しい良酒が醸され続けていく。
*2024年度全米日本酒歓評会にて、「純米大吟醸 天鷹 吟翔」が金賞を受賞したとの朗報が、つい先ほどのxで発信されました。おめでとうございます!
天鷹酒造(天鷹酒造株式会社|有機日本酒)
天鷹酒造/ 栃木県大田原市蛭畑2166 電話:0287-98-2107