【今日のお通し】桜の下には・・・

2022.04.01

友人と満開の花見をしながら歩いていると、「桜の樹の下には屍体が埋まつてる！」って言った人がいたよね、坂口安吾だっけ？と聞かれ、そんな気もすると適当に返してしまったが、気になって調べてみると、違うじゃない。

梶井基次郎よ。『檸檬』で有名な明治の作家。「桜の樹の下には屍体が埋まつている！」という書き出しから始まってる短編小説『桜の木の下には』ですよ。読んだと思うのだけれど、引っ越しを繰り返すうちに自分の本棚からは消失していた。

坂口安吾はあった！桜をモチーフにしたものは『桜の森の満開の下』で、『堕落論』と共におさめられている。こちらもただならぬ話。桜の下に来ると人は怪しくなるのだ、という話から始まって、山賊の話にうつる。妻にした美しい女がいつしか鬼へと化し、首を締めあげられた山賊が、その鬼を押さえつけて絞め殺してしまう。

我に返るとそこには鬼ではなく、もう動かなくなった美しい女房の姿があった。

やがて女の姿は搔き消え、桜の花びらになっていく、さらに山賊の手も、身体も消えゆき、満開の桜の下には花びらと冷たい虚空だけが残った、という話。読み返してみると、そんなストーリーで、星野源の曲「桜の森」に共通するところがあることに気がついた。

受け継がれる桜が醸す妖気の気配。いずれにせよ、何かありそうにオモワセル美しさが桜の魅力なのか、酒を飲んで意識を朦朧とさせなきゃ、実は怖い夜桜、なのかもしれない。

「ひそひそと花が降ります。それだけのことです。」（『桜の森の満開の下』より）

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