誌面ビミーで長年連載している中沢けい氏の「酔々日記」です。文士の筆遣いに、日本酒が気持ちよくあふれでてきます。

【中沢けいの酔々日記】あおうおを食べる

2022.07.23

入梅いわしと言って梅雨時のいわしは美味しいとされる。いわしとならび関東の夏はしんこのおすしが珍重される。小肌の稚魚をにぎりに四枚つけ、から時には八枚つけなどにする。小さい魚を丁寧に作らなければならないので、寿司屋さんにとっては儲かるネタではない。

でも、お客のほうからすると、けっこうな請求がくるネタだが、東京ではこれが貴重で、食べると自慢したくなる。稚魚だからあっと言う間に大きくなってしまう。

しんことは言えなくとも小肌もなかなか旨い。

京湾の夏の魚で鯵は欠かせない。

夏はあお魚の季節だ。

カウンターでお好みのおすしを食べる贅沢に預かったのは三年ぶりのことだ。「どれも二個づつでお願いします」と。にぎりを二つを一貫と数え、二個一組で出てきたのは昔の話で、いつの頃からか二個づつを頼まないと一個しか出てこないことも珍しくなくなった。

さて、何から握ってもらおうかと考え、注文したのがいわし。

これがすばらしく美味しかった。お次は鯵。それからしめ鯖。鯖は秋になると脂がのるのだが、ここはしめ鯖で季節を先取り。そのあとで小肌の酢しめ。あおり烏賊で気分を変え、蝦蛄を甘いツメで握ってもらう。煮はまぐりもツメで。

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