誌面ビミーで長年連載している中沢けい氏の「酔々日記」です。文士の筆遣いに、日本酒が気持ちよくあふれでてきます。

【中沢けいの酔々日記】突然、おでんの季節

2023.11.30

 この頃はお天道様の仕事も雑になっちゃってと言うと、ちょっと考えてから笑う人がいる。気温二五℃以上の真夏日から真冬の気温にまっさかさまだったことを言っているのだと気づいてくれる。突然のおでんの季節到来だ。

 大きな鍋に具材を入れ、ことことと煮ると家の中が暖かくなる。暖房をかねておでんを煮る。おでんでお酒といえばやっぱり燗酒でしょう。熱燗よし、人肌よしで、好きな具をつまみながら飲めばほかほかと暖まってくるのも、本格的な暖房を入れる前の季節の楽しみのひとつに数えている。

 以前はおでん種を売る店が、どの町にも一軒くらいはあった。お店によって工夫されたおでん種があり、町を歩いていて、おでん種を売っている店を見つけると、ついついあれもこれもと買い込んでしまうこともあった。

 関東と関西でおでん種が違うのもおもしろい。関西ではおでんに結び昆布はあまり入れないそうだ。ちくわ麩を知らないという関西人も多い。関東者が大阪のおでんの鍋を覗いた時に珍しく感じるのは牛スジや蛸の串。

白菜や白菜の細切りを干瓢でしばっておでんの汁でさっと煮たり、エノキダケ、舞茸、松茸までおでんの汁でさっと煮て出すという方法は大阪へ通ううちに覚えたやり方だった。

その昔は、深夜になると千日前あたりのアーケードに「関東炊き」と書いた赤い提灯を下げた屋台が並ぶのを「へぇ」と眺めたものだ。大阪で「関東炊き」の看板を見なくなった。屋台のおでん屋さんは東京でも大阪でも姿を消した。

 さて、突然のおでんの季節到来。さつま揚げ、ゴボウ巻き、茹でたまごにちくわ麩、こんにゃく、しらたき、大根、じゃが芋、結び昆布。おでんのタネをいろいろそろえ、そうだ!ギンナンの入れなくっちゃとギンナンの下ごしらえをした。

おでんのタネも季節で入れ替えるのが楽しい。

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