人気ドラマ『孤独のグルメ』原作者である久住昌之さんがふらっと立ち寄ったお店、そこで嗜んだ地酒について気ままにつづります。

「武雄温泉でちょいと贅沢酒」

2024.04.30

 6月13日に産業情報センターという出版社から「新・佐賀漫遊記」という本を出します。これはボクが2017年から2023年にかけて、断続的に佐賀を散歩した本。

 焼き物の絵付け体験をきっかけに、佐賀通いが始まり、だいたい佐賀全土を歩きました。

 有田焼・吉田焼・伊万里焼、温泉、有明海苔、佐賀ラーメン、バルーンフェスタ、演奏、進水式、忍者村、かかし祭り……おいしいこと面白いこといっぱい。

 地味な県と言われ、多くの人が佐賀県がどこにあるかさえ地図ですぐに指差せない。でも歩いてみれば、驚くことばかりでした。

 さて、佐賀でも夜になれば飲んでいましたが、その中でもおいしかった一軒。武雄の「あん梅」。ここは最初自力で「勝負」に出て入り、おいしかった店。

 だけどその翌年、武雄で開かれたトークイベントの打上げで、地元の人に連れていってもらい、ボクの勘が正解だったことが証明された。嬉しかったなー。

 さすが有田焼や伊万里焼の窯元にも近いせいか、器がどれもすごくいい。それも、ただ高級そうというのではなく、センスがいい。食べ物に合ってる。

そしてまた、そこに食べ物の盛り付けが美しい。器と響き合ってる。ボクは飲み屋でそういうことには、わりと無頓着な方だけど、この店では感心しました。

 新鮮な海産物を中心に、何を食べてもおいしい。写真はお造り盛り合わせだけど、ね、美しいでしょう?これで酒が進まぬわけがない。肉料理に野菜もおいしい。

 佐賀でしか食べられない「エツ」という小さな魚の唐揚げもボクは大好き。

 佐賀は酒もうまい。九州というと焼酎のイメージがあるけど、佐賀は米所でもあるので、日本酒がおいしいのだ。

 この晩は鹿島の光武酒造の「光武」の純米酒をいただきました。光武酒造といえば、芋焼酎の「魔界への誘い」が有名だけど、日本酒もうまいんです。

 武雄といえば、武雄温泉。温泉旅館ももちろんいいけど、ぜひ寄りたいのが公共温泉浴場。竜宮城の如き楼門からして面白い。風格あるし、安いし、泉質もすばらしい。

武雄温泉駅の駅構内にあるブックカフェ。 ビールも飲める!

西九州新幹線の武雄温泉駅もできたし、図書館は半日過ごせるほどスタイリッシュだし、巨木はあるし、武雄オススメです。

 本ができたらまた行くつもり。皆さんも未知の佐賀へ旅酒しに行ってみれば?

*バックナンバーは有料記事となります。

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