人気ドラマ『孤独のグルメ』原作者である久住昌之さんがふらっと立ち寄ったお店、そこで嗜んだ地酒について気ままにつづります。

「和歌山・田辺の炉端焼き、感動」

2023.01.30

 

 取材で和歌山の田辺に行った。

 行かないでしょう、田辺。僕も初めて。

南方熊楠記念館など行って、夜になりました。

腹も減ったし、田辺の飲食店街を徘徊して、飲み屋を探したわけです。

 飲み屋街、広い。そしてよさそうな店多い。漁港でもあるから、寿司屋も多かった。

 かなり迷いに迷って、ようやく入ったのが、「炉端焼き・とっくり」。

田辺まで来て、炉端焼き? 時代遅れじゃないの? 東京じゃあ絶滅危惧種だよ、というもう一人の自分を「黙らっしゃい!」と一喝して、入店。

 わ、混んでる!どうにかカウンターにねじ込んでもらえた。ところが、ビールを頼むと、店の女将に、「食べ物ちょっと待ってください、今マスターが用事で出てるんで」と言われた。なに、ビールがあればいくらでも待ちますよ。両サイドの二人連れも、飲み物だけでおあずけ談笑状態。

マスター帰ってきた。おじいちゃん。みんな一斉に注文。こりゃなかなか出てこないぞ、と思ったら、頼んだ肴は次々出た。マスターきっと凄腕。しかも顔には余裕の笑み。

まず「イザキのたたき」。イザキ?聞いたことないと思ったら、こっちのイサキだ。たたきは初めて。予想を反して、塩たたきみたいだった。こっれっがっ、めちゃウマ!あっさりしていて生姜が入ってて、いくらでも食べられる刺身!こんなの初めて。感動して、慌てて和歌山の地酒「黒牛」の純米を頼む。

イサキのたたき

 そして、もずく酢、厚揚げ焼き、漬物、全部旨い。特に茄子とキュウリの糠漬け、これだけで飯2杯軽く食える絶品。

 もうこの時点でこの店大当たりと確信。

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