誌面ビミーで長年連載している中沢けい氏の「酔々日記」です。文士の筆遣いに、日本酒が気持ちよくあふれでてきます。

【中沢けいの酔々日記】どじょうを食べに行く

娘が勤務する会社の近くにどじょう料理で有名な「駒形どぜう」がある。「あるのは知っているけど、行ったことはまだないの」と娘が言っていた。会社の同僚に人に聞いたら「うなぎのほうが美味しいよ」と言われたとのことだった。そりゃ、どじょうよりもうなぎのほうが上等なのは間違いない。

　時々、学生が「どじょうを食べてみたい」と言い出すことがある。岡本かの子が「命」でどじょう汁を食べる老人を描いているのが、うまそうだと言う話からそうなることもあれば、何かの拍子にどじょうを食べてみようと話が広がることもある。

　ここ三年ほどはコロナ禍で、学内学外の飲食は禁止されていたから、今年こそはどこかに出かけたとの希望もあり、浅草の「駒形どぜう」に出かけることになった。