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「若狭で「なっぱ煮」に感激した夜」
2024.10.31更新
人気ドラマ『孤独のグルメ』原作者である久住昌之さんがふらっと立ち寄ったお店、そこで嗜んだ地酒について気ままにつづります。
「浜松、鰻肝焼きとタコブツで一杯」
去年の大晦日「孤独のグルメ・大晦日スペシャル」がオンエアされました。物語は、五郎が京都の伊根から、車を運転して大晦日の東京に向かう、ロードムービー。
ボクは五郎が浜名湖にてうな丼と牡蠣の蒲焼を食べた店「松の家」で、ドラマ内にちょい役出演しました。五郎が食べているところへ、ふらりと入ってきて「肝焼きとビールちょうだい」と言って一杯やるのが、ボクの役どころ。
レギュラーseason中、五郎のシーンのロケ現場にボクが行くことはありません。「ふらっとQusumi」は、本編とは別の日に少人数のスタッフで撮影しています。だから松重さんと現場で会うのは毎年1回か2回。
今回の撮影が終わった後、松重さんは開口一番、
「ここの山椒、めちゃくちゃおいしくなかったですか!?」
と言いました。ボクも驚いたんです。うっすら緑色で、ものすごく香りがいい。いやボクの経験上でもずば抜けている。辛味も上品。言うなれば、エレガントな山椒。
ボクらは、店の女将に「この山椒、どこで売っているんですか?」と思わず聞きました。そしたら、この「浜松産天狗山椒」は、地元でもなかなか手に入らない1品だそうで、毎年春に買える分だけ入手するとか。
「肝焼きに最高じゃなかったですか?」と松重さんが言うので、
「はい。これでビールがもう最高」と答えると、松重さんは「でしょうねぇ。…ビールはもうわからないけど」と遠くを見る目をした。
松重さんは3年前にアルコールをスッパリやめたのだ。日本酒も大好きだったのに。役作りのためです。少しでも長く、井之頭五郎がたくさん食べられるように、です。すごい役者魂だと思いませんか?
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