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「西成でたこフェに遭遇、〆にカレーうどん」
2024.11.30更新
人気ドラマ『孤独のグルメ』原作者である久住昌之さんがふらっと立ち寄ったお店、そこで嗜んだ地酒について気ままにつづります。
「飛騨古川で、熱燗と中華」
飛騨古川に行った。岐阜県だ。盟友・藤井康一とライヴをするためだ。
藤井くんはかれこれ30年、この町に通ってライヴをしている。
ボクは5年ぶり、2回目だ。
5年前に来たのは、雑誌の取材の仕事だった。それは古川の隣町の神岡の取材だった。神岡の名前は知らなくても「スーパーカミオカンデ」の名前は聞いたことがある人も多いだろう。世界的な素粒子の観測装置であるが、それ以上は何度聞いてもわからないままだ。とにかく、それがある町である。
で、神岡から隣町の飛騨古川に移動した時、突如、藤井康一の歌を思い出した。
『熱燗と中華』だ。
これを聞いたのはもう30年近く前、藤井くんのCDアルバムでだ。
熱燗と、中華。この中華は、中華そばのことだ。熱燗と中華そば。全然合うと思えない。ところがこの歌では、それがうまい、と謳われている。その歌は、
「飛騨の奥、ヒダの奥の奥のヒダ、古川」
と始まっていた、そしてその古川の「さか江家」という店でやる熱燗と中華がウマイ、と確かに歌っていた。
稲妻のごとく思い出したボクは、すぐさま検索すると、飛騨古川駅前に「食堂 さか江家」はあった!行くしかない。
そして「熱燗と中華、お願いします」と言った。周りを見回すと、そんな組み合わせを飲み食いしている客は、誰ひとりいなかった。急に不安になった。
出てきた熱燗は、意外にもコップ酒だった。てっきり徳利だと思っていた。
続いて中華そばがきた。この写真はその5年前の、初熱燗と中華の写真だ。
どうです。この透明感のある醤油スープ。細いちぢれ麺。目に麗しき、実に端正なラーメンではありませんか。
麺を啜ってみると、これが見た目を裏切らない端正な味。「うーん」と思わず小さく唸り、熱燗をちぴりと飲んだ。
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