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鹿児島で半魚人の腹皮焼き
2025.04.30更新

人気ドラマ『孤独のグルメ』原作者である久住昌之さんがふらっと立ち寄ったお店、そこで嗜んだ地酒について気ままにつづります。
「青森の居酒屋で旨い蕎麦に出会った」
仕事で青森にまた行った。この数年で5回ぐらい行っている。全部別の仕事。今回は青森市内で講演。
前日の夕方宿について荷物を下ろし、例によって下調べなく、宿の周りを「調査」。
ずいぶん歩き回って本当に大通りから少し入った横丁ある「横丁」という居酒屋に目を止めた。

暖簾には右から左に店名が書いてあって、だから「丁横」になってるが、その文字がなんとなく魅力的だった。メニューや値段などは表に一切出てない。店内は見えない。勝負だ。でも格子戸に何かここで長くやっている店の温かみを感じた。どこか真面目そうな感じもする。
時間が早いこともあって、入ってすぐの4人掛けのカウンターが空いていた。奥は座敷になっていて、畳敷きだけど椅子のテーブル席。先客の6人グループが静かに宴をはじめたところのようだ。常連ぽい。
ホワイトボードにはマグロ、ヤリイカ、ウマヅラ、海峡サーモン、オニカサゴなど地魚と思われる魚の刺身が並んでいて、うまそう。自家製鯨ベーコンや、ほやもある。この店アタリなんじゃないかと思う。

まずはビールと「いか生干炭火焼き」「新キャベツのオイルがけ」を頼む。キャベツが大好きなので、外せない。青森のキャベツに興味津々。

そしたらこのキャベツがおいしかった!粗挽きコショウが効いていて、甘みがあり柔らかいキャベツに口の中が嬉しい。
さらにいか生干が身が厚くてふっくらして、味も香りも最高。マヨネーズがついていたが、それをつけるのがもったいない。
ビールを喉の奥に片づけ酒にする。聞いたことない青森の地酒「亀吉」の冷や。おいしかった。いや、この肴を出す店主が選ぶ酒がおいしくないわけがない。

そしてカサゴとタコの刺身。文句なし。青森、いいなぁと思う。奥の先客もゆっくり静かに盛り上がっている。一見さんがいうことではないが、客筋がよさそうな気がした。酔っ払って騒ぐ客なんていなそう。
最後にざるそばを一枚頼んだ。メニューに「手打ち蕎麦」と書いてあり、座敷の奥に蕎麦打ちスペースがちらっと見えた。

この蕎麦が、絶品!キリッと締まり、歯応え、鼻に抜ける蕎麦の香りが新鮮。そしてつゆが、甘くなく辛くなく、出しゃばらずしかし出汁が効いていて絶妙。一口啜って思わず唸った。近年いろんなところで食べてきた蕎麦の中で、個人的には一番かもしれぬ。ちょっと驚いた。いや、大いに驚いた。呑んだ後に酔いが覚めるような一枚でした。
あまりよかったので、翌日別の店で飲んだ後、蕎麦だけ食べにもう一度行った。
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