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「青森の居酒屋で旨い蕎麦に出会った」
2025.05.29更新

人気ドラマ『孤独のグルメ』原作者である久住昌之さんがふらっと立ち寄ったお店、そこで嗜んだ地酒について気ままにつづります。
「三重県の知らない町へ」
三重県のいなべ市というところに行った。聞いたこともない、初めて行く土地だ。三重県の一番北に位置する山間にある。
北勢線の小さな列車にゴトゴト乗って45分。終着駅の阿下喜(あげき)。山間に青い田んぼ。駅のそばの新しい温泉宿に泊まって、周辺を散策した。

今旅をすると新幹線から既にたくさんいるインバウンドの外国人も、さすがにここまでは来ない。全然いない。
地図だけ見て何にもない田舎と思っていたら(失礼)、意外にも(失礼)おしゃれなカフェがある。スパイシーなアボカドトーストがおいしい。地牛乳の大内山牛乳を使ったアイスカフェオレがまたよい。
駅から近い温泉宿はコンテナハウスと書いてあったから、簡易な狭いものだろうと思っていたら、広くはないけど2ベッドルームでシャワーもあるしテレビや蔵庫も屋外テーブルもあって快適。平日は一人1万円ほどだけど、二人では7千円位、三人で泊まれば一人5千円になる。もちろん温泉はあるし、宿泊者無料の午前中サウナ施設の充実がすばらしい。中庭の水風呂に入りながら「なんだここ、スバラシイじゃないか!」と感激。休憩室もスタイリッシュでセンスあるグラフィカルな本が並ぶ。
でも、通りに出れば古い玩具店。一歩入れば積み上げられたプラモデルはいつのものだろう。ぞくぞくワクワクした。じいちゃんばあちゃんがやってる「食堂かどや」は最高にボク好みだった。ソース焼きそばでビール。
そして車を使えば10分で渓谷もある。ここで滝を眺めて、マイナスイオンを浴び、ぼーっとする。真夏でも涼しい。

欲張らず、お茶を飲んだり休憩しながら、無理せず行けるところだけのんびり回って、写真をたくさん撮り、最終日に市内のホールでのセレクトした画像をプロジェクターで見せながら今回の旅の話をした。すごくウケた。
二日目の夜、取材から戻って簡単に写真を整理したあと、宿に併設された食堂で一杯やった。若い男女が快活に働いている。接客がとても気持ちいい。居心地もいい。正直こんな店があると思っていなかった。

外で軽く食べていたので、おばんざい盛り合わせと、冷酒をもらった。置いているお酒の種類は少なくて、冷酒は善左衛門一種類だった。もちろん三重の酒。伊賀市の若戎酒造。全く聞いたことない酒。一合徳利に入れて出してくれたが、呑み飽きしない酒だった。これ一種で十分。豆アジの南蛮漬けと、キャベツとゴマ和えのキャベツがピッタリ。
今回、あまりに知識がないので少し調べてきたが、やはり旅は行ってみないとわからない、とつくづく思った。ボクは日本のことをまだ全然知らない。とても有意義な旅だった。
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